第2章

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 2  物心つく頃には誰も信用していなかった。    親が子を育て、その子が成長し、親になってまた子を育てる。その輪廻がずっと続いていく。それだけの事だと疑いもせずそう思っていた。  実際両親にもこれとって愛情を感じることも無く、ただ「家族」という枠組みの中で暮らしていた。    そして高校3年生の時、佳恵に出会った。 「ねえ君、もうちょっと笑った方がいいよ。」  そう言うと彼女はお手本を見せるかのように笑顔を俺に見せた。  今までに無い感覚を覚えた。今までに無い感情が生まれた。  それから少しずつ、佳恵との距離は近付いていった。  その頃の俺は女性を好きになると言う感覚がよく分からなくて、ただまたあの笑顔を見たいなくらいにしか思っていなかった。  それでも、意識的になのか無意識なのかは分からないが俺の方からも佳恵に歩み寄っていっていたと思う。  ある日の帰り道。何度目かの2人の帰り道。突然佳恵が言い出した。 「私、君のことが好き。あなたは?」 「分からない。」 「フフッ。そうだよね。そういうと思った。」
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