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「心が読めるの?」
「そうじゃないけど、分かるよ、それくらい。」
「何で?」
「だって、いつも仏頂面だし、何考えてるか分からないし、女の子になんか興味無さそうだし。」
「ひどい言われようだね。」
「ごめん、ごめん。」
風が少し流れ、セミロングの佳恵の髪が揺れた。
「でもね、いつの間にか好きになっちゃった。」
「う、うん。」
正直、そんなことを言われても返事に困る。正解は何処にあるのか。
「もしよかったら、他に好きな人がいなかったらでいいんだけど、私と付き合ってくれないかな?」
「好きな人は別にいないけど……。」
しばしの沈黙の後にやっと捻り出した答えだった。
「じゃあ、付き合ってよ。」
そういうと、佳恵はカバンからスマホを取り出した。
「番号交換しよ!ね。」
俺は流れに任せてスマホを取り出した。まだ返事はしていないのだが、何となくそれでもいいかなと思った。
それからの日々はずっと佳恵のペースで進んでいった。
もともと他人に意思を伝えることを得意としない俺は、いつも佳恵の言われるままに行動していた。
そんな中、表には現れない俺の中の感情が、佳恵に対する感情が少しずつ大きくなっていった。
それに気付いたときには、もう佳恵を好きになっている自分を認めざるを得ないくらいになっていた。
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