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夕暮れ時の公園。人もまばらで気温も夜に向かって段々と下がってきた。
俺たちはベンチに座り、ただ何かを眺めていた。
「ねえ、なんでそんなに笑ったり、悲しんだりしないの?」
「そんなの俺にも分からないよ。」
逆に何で他の人はそんなに笑ったり泣いたりするのかが分からなかったくらいだ。
「だって、私がしたいことは何でもしてくれるし、一緒にいて不満も言わないし。私から付き合ってって言っておいて、おかしいのは分かるんだけどさ。」
そこで少し佳恵は間を置いた。
「何?」
空白が嫌で、つい間を埋めてしまった。
「なんか、私の理想を言って作ってもらった人形と付き合ってるみたい。」
佳恵は俺と目を合わせず、宙を見ながらそう言った。
「俺は……。俺は佳恵のこと好きだよ。」
「そう、それ。」
その時、佳恵は宙を見ていたのでは無く、宙の中の何かを確かに見ていた。
「その言葉、どこから言ってる?」
質問の意味が分からない。
「君の言葉に温度を感じない。」
何のことを話している?
「私は君が今でも好き。でも……。でもずっと一方通行じゃ、私の心がすり減ってくばっかじゃん。」
そう言って佳恵は泣き出した。
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