第2章

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 その日から俺と佳恵の距離は離れていった。    日を追う毎に加速度を増して。  今思い出してみれば、あの時俺が何らかのアクションを起こしていれば、2人は離れなかったのかも知れないとも思う。  結果論ではあるが、佳恵がすり減っていったと言う心に、 少しでも俺の心をのせられたのなら、今はもうこんなことをしていないで、幸せな生活を送っていたのかもしれない。    心の温度。  大人になった今は理解できる。だからといって俺の心が温かいわけでは無いが、物理的には作用しない何かが自分の居場所を決めるということもあるらしい。    それもまた幸せか。  ふとそう思う。  羨ましくも無いし、そうなりたいとは思わないが、知性や理性など無意味に思えるほどになったのなら、それもまた2人で笑い合える要因となり得るのだろう。  愚かだ。  今までの俺の生きてきた人生から判断すれば、そんなことは愚かなこと。  それもまた真理なのだろう。
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