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エピローグ
返り血を浴びた上着を脱ぎ、その上着でナイフを包んだ。
少し小走りでその場を離れる。
体は小刻みに震え、焦点もあまり合わない。
この感覚は何だ。右手に残る嫌な違和感は何だ。
速度を緩める。
まともに任務を遂行したというのに達成感など訪れない。
ただ、ただ、嫌悪感だらけの感覚が俺の体にまとわりついてくる。
さらに歩が弱まる。
歩きたくない。
我慢できずに、近くのベンチに座り込んだ。
上着を抱え、涙を堪え、下を向く。
パァァン。
乾いた音がした。と同時に背中に鋭い痛み。
目の前の地面で何かが弾けたのが見えた。
何だ。
胸のあたりが温かい。視線をそこに持っていくと上着が段々と赤く染まっていくのが見えた。
撃たれたのか。
少し煙の匂いがした。
「あの時もこうやって2人で座っていたわね。」
その言葉とともに1人の女性が俺の隣に座った。
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