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「残念、不正解。」
不正解?
「私達の仕事に感情を入れちゃ駄目よ。」
「何故俺が殺される?」
まだ意識はある。急所は外されたみたいだ。だが、多分余裕は無い。
「自分が1番分かってるんじゃない?人を殺してみて、どう思った?震えたでしょ?嫌悪感でいっぱいだったでしょ?それは私達にはいらない感情。いずれ足かせになり、いずれ命取りになる。その前に摘んでおかなきゃ。」
目が少しぼんやりする。その分余計な思考が入ってくる。
「あの時は正解だったのになあ。ほんと、残念。」
あの時?あの時とはいつのことだ。
「ねえ、君、私はあの時、ちゃんと好きだったんだよ。」
佳恵……。
「私もあなたも2人とも試されてたんだよ。私は失敗しなかったけどね。それで、今日が私の昇進試験。だって人生で唯一私の心を動かしたのは、君だけだったから。」
意識よりも先に何かが遠のいていくのを感じた。
俺の体は、もう多分無理だ。
「じゃあね、愛しの君。」
パァァン。
また乾いた音がした。
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