エピローグ

3/3
前へ
/19ページ
次へ
 体はもう動かない。  これが、死か。  何において何が正解なのか。  佳恵にとって、俺の選択は不正解。組織にとっての不正解。  だが、少し。ほんの少しだが心の温度が上がった気がした。  あの時分からなかったもの。死ぬ間際にやっと分かった気がする。    命と引き替えに、やっと人間としての当たり前の感情が理解できた気がする。  ああ。これなら。  こんなに温かいものなら、一生をかけても惜しくないと思えるのか。  薄れていく意識の中、俺は初めて心からの笑顔を浮かべた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加