第1章

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 3  飯村 俊介、36歳。職業、警備員。  色々な職業を経験してみたが、結局今の職に落ち着いた。やはり、人付き合いは苦手だ。  苦手なら苦手なりにと思い、いっそのこと周りがすべてお客さまだと思える職業に就こうと思った。  正解だった。仕事中は敬語を使って、下手に出ていればいい。あとはルールを守れば接する人間はみんな他人だから、とやかく言われることも無い。   そして基本的に一人の職場。会社の人間と話さなくてはならない機会も月に2、3回程。  人と話すときに色々考えてしまう俺にとってはうってつけの職業だ。 「お疲れさまでした。」  何処の誰かも分からない人に温和な挨拶をする。9割の人は、返してくれる。しかし、1割の人には無視をされる。結局、そういう世の中なのだ。  そんなことに直面したときに、人は二手に分かれるのだろうなと思う。  自分は人に優しくしよう。もう一つは、それなら、俺も面倒だから無視しよう。    私はどちらでもない。  というか、何も思わない。
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