第1章

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 俺が人に優しくする理由。  それはこの世の中で生きやすくするため。それに尽きる。人の感情などどうでもいい。だが逆にその感情を自分に得な方に持っていけば、生きやすくなると、そう思った。  だから、副業の連絡が来たときも、ああ、そうか。やっぱり。と思っただけだった。たいして驚きもしない。  それまで、そういうものが存在しないことの方が不自然だとずっと思っていた。    ただ、人を殺してくれとそれだけでいいと。    後処理は誰かがやってくれると言っていた。  何でも、普通の人は躊躇してしまうんだとか。全然知らない人を殺すのには抵抗があるらしい。  知らない人なら、遠くの国の人も日本人も俺は一緒だと思うが。今こうしてる間にも世界では数多くの人が理由は何であれ、死んでいっている。  変な理屈だ。まあ人間は変なところで意地を張る動物だから、それを理解しようとは思わない。    余計な詮索はしない。するわけが無い。  バラさない。言う相手がいない。  これでお金が貰えるのだから、文句など何もない。  ああ。余計な感情が無くて良かった。
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