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もっとも、始まった当初は今のような残酷な趣向を凝らしてなどいなかった。この番組の大きな目的は、世界中にある“不老不死”について考えることだった。いつの時代も不老不死を名乗る者は大勢いた。けれど、そのどれもがいい加減なものばかりで、自分が不老不死だといい、怪しげな薬を人々に売りつけたりした。そのような、詐欺まがいのことをしている連中を罰するのも、番組の目的の一つである。どんなに不老不死を名乗ろうと化けの皮一つ、剥がしただけで不老不死でないことが証明さてしまう。
科学とオカルト系番組を掛け合わせたような番組は不定期で行われ、まあまあの視聴率を稼いでいた。
ところが、放送10回目を迎えたその番組で事件は起きてしまった。その回は初めての生放送で行われ、不老不死を名乗る偽者をその場で糾弾しようというものなのだ。そこ現れたのが、彼らだった。彼らはそれぞれ、科学的、魔術的、悪魔と契約してなど様々な方法で不老不死になったと主張した。当然、スタジオの誰もが信用などしていなかった。どこかの大学の教授や医学博士を連れてきて、彼らを徹底的に追い詰めようと企てた。
しかし、彼らは自分達が不老不死であることを証明する為にもっとも、手っ取り早い方法を選んだ。それは、大勢の人々が見ている目の前で自殺するという方法だった。一人は隠し持っていた拳銃を口に咥え引鉄をひき、一人はテレビ局のスタッフを引き連れ屋上から飛び降り、一人は水筒に入れていた灯油を頭から被り火を点け、一人は壁に立てかけてあった機材の下敷きになることで。
当然、スタジオは騒然となる。まさか、生放送中に自殺してみせるなど誰も予想すらしていなかった。明るい雰囲気だったスタジオは一変して、パニックになる。気難しい顔をして座っていた教授は顔面蒼白、医学博士は大慌てで駆けつけ蘇生を試みようとした。画面も切り替わり、環境映像を流し番組の中断を告げていた。思いも寄らぬ事態に、番組関係者がどうするべきか話し合っている中、彼らは生き返った。そのことは、当時番組の様子を見ていた観客の一人がツイッターに投稿したことで分かった。
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