氷漬けの心

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店内を覗いてみると可愛らしい小物がきれいに並べられていた。「こんなところに雑貨屋さんなんてあったっけ?」と思ったが最近は勉強ばかりであまり家から出ていないので自分の家の周りに新しいお店ができたかどうかなんて気にしていなかったことに気づいた。中へ入ってみたかったが何も持たずに飛び出してきてしまったので気に入った物があっても買うお金がない。そう思い諦めて通り過ぎようとしたその時、 カランカラン ドアに付いたベルを鳴らし長身の若い男の人が出てきた。男の人は出てくると微笑み 「ようこそワンダーランドへ。私は店長の神梛(カンナ)と申します。見て行かれるだけでも結構ですよ。外は寒いでしょうから少し寄っていきませんか」 そう言ってドアの前で突っ立っていた私を店内へと促してくれた。確かに外はまだ10月だというのに真冬並に寒かったし何より店内が気になったので促されるまま中へ入ってみた。店内はとても暖かく、小さな振り子時計や色とりどりのガラスペンなど可愛らしい雑貨が陳列していた。神梛さんが入っていったレジの奥からは嗅いだことのないほのかな甘い香りが広がっている。陳列されている商品を手にとって見ていたとき神梛さんがレジの奥から出てきた。 「この奥の温室にラベンダーティーを用意させていただきましたのでどうぞこちらへ」 「えっ、そんな。暖まらせていただいた上にお茶だなんて」 私が驚いてそう言うと神梛さんは 「ちょうど暖かい飲み物が飲みたいと思っておりましたので。一人で飲むより2人で飲んだほうがいいですし」 と言って微笑んで木製の扉を開けた。
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