氷漬けの心

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そこは温室になっており、沢山の花々が咲き乱れ、レジの奥から香ってきたのと同じ香りが満ちていた。入ってすぐ左手にはおしゃれな白いテーブルと2つのイスが置かれていてそのテーブルの上には鮮やかな紫色のラベンダーティーが入った透明なティーポットとティーカップが置かれていた。神梛さんはイスを引くと 「どうぞこちらへお掛けください。」 といって私が座ると引いたイスと、向かい側のイスに座って私のカップにラベンダーティーを注いでくれた。神梛さんが注いでくれたラベンダーティーには頬に涙の後が付いたままの私の顔が写っていた。一口飲むと心にじんわりと染みてぽかぽかしてきた。 「結莉花さん、何か辛いことや悲しいことでもありましたか。きれいなお顔が涙で濡れていますよ。よかったら私に相談してくれませんか」 神梛さんがそう私に尋ねた。普段は初対面の人の前で涙なんか見せないのだがほっとして涙が出てきてしまったらしい。 「実は、母と進路のことでもめていて。私は朝早くに起きることができなくて夜間に通える高校に進学したいのですが母は私の成績がいいので偏差値の低い夜間に通える高校はだめだと言うんです。私も……努力してるんです。だけど……だけど……」 最後の方は涙と鼻水で言葉になっていなかった。それでも神梛さんに私の思っていることは伝わったらしい。
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