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「銀ちゃーん。こらー。銀二ー。そろそろ昼休み終わりだぞー……だめだ。起きない」 「ライト。こういう時はこうするんだ」 ――――バシッ!! 「ッ!!い、……てぇ」 「あ、起きた。ブッシーって意外とこういうことするよね」 「お前や大虎がやらないからな。こういうのは必然的に俺の役割になるだろう?」 「ははっ!」 明るい声と低い落ち着いた声を交互に聞きながら、銀二はゆっくり顔を上げた。 「よだれを拭け、よだれを」 ブッシーと呼ばれた低い声の男が投げたティッシュボックスは、目の前のローテーブルの端に着地をし、それを2、3枚抜き取って頬を拭う。 ゆっくり瞳を動かして、この場所を確認した。 広い部屋に所狭しと並ぶ棚にはファイルや資料がずらりと並び、部屋のドアを除く3方向を背に、それぞれ大きめのデスクが3台鎮座している。 銀二がその中心にあるソファに座ったまま傍らを見上げれば、二人の男が自分を見下ろしながら苦笑を漏らしていた。 夢か。 ぼーっとした頭のまま、そう、心の中でつぶやいた。 ずいぶん懐かしい夢を見ていた。 今でもはっきりと覚えている。 傍らに座る存在感。 自分を見上げる猫目の輝き。 たった一つだが年上としての余裕ぶった流し目と、屈託なく笑う笑顔。 銀はそのどれもが夢だったことに小さくため息を吐き出した。 それからぐっと伸びをすると自然と声が出る。 「んーーーーっ!!……だぁっ!!」 気合を入れるようにしつつ体の力を抜けば、頭の中がすっきりしてきた。 「ようやく覚醒?」 ライトと呼ばれていた方の男が少しいたずらに銀を振り返る。 ブッシーと呼んだ男の座るデスクの傍らに立ち、視線を書類から銀二へと向けていた。 よいしょと腰を持ち上げてソファから立ち上がる。 銀二は両腕を頭上へ持ち上げて、もう一度ぐっと伸びをした。 廊下からヒールの音が響き、ためらいもなくドアが開かれる。 その足音はほとんど速度が緩むことなく部屋に入ってきた。 「あら、銀ちゃん。珍しく昼寝でもしてたの?」 足音の主、芽衣が自分のデスクに向かいながらそういうと、ライトがからっと笑い声をあげた。 「芽衣さん、せいかーい!よくわかったね」 ライトの言葉に返事するように、芽衣はツンツンと自分の頭を指さした。
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