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――――銀二、高校1年生
「……あー……ねみー」
高校の屋上で、銀二はごろりと仰向けに転がった。
大の字に手足を伸ばした傍らには光輝が紙パックのジュースのストローを加えたところで、ズズズッと音を立てて飲み切ったのを確認して口を開いた。
「なー、ライトー」
「……んー?」
「皇輝さん、こねーの?」
「さー、知らね」
「皇輝さん来ると思って、俺ここに来たのによー」
銀二はふてくされたようにため息をつくと、フッと息を吐きながら体を起こした。
屋上の出入りは比較的多い。
階段へとつながる扉が開かれるたび、銀二はちらりと視線を送ったが、目的の人物は現れない。
別に、用事があるわけではない。
ただ、皇輝と一緒にいると楽しいのだ。
ワクワクして、次に何かが起こるのではと期待してしまう。
白い歯をのぞかせてにかっと笑う笑顔はいたずらっ子のようで、しかし、喧嘩はものすごく強くて統率力もあり頼りがいがある。
それは傍らに座る弟の光輝もまたそうなのだが、年上の皇輝は兄のように慕っていた。
ガチャリと音がして、銀二はちらりとドアを振り返った。
現れたのは孤高の狼のような大虎。
表情がなく、常に周りを警戒しているように見えて、何を考えているのかわからない。
銀二は正直苦手だと思っていた。
「あっ!!トラちゃーん!!」
光輝がパッと顔を輝かせて大虎へと走っていく。
いつも一緒にいるわけではないが、二人は幼馴染で肝心な時にはいつも二人そろっていると銀二は分析していた。
「……っつーか、ライトのやつ、ごみ置いて行きやがった」
言いながら、ビニール袋にごみを突っ込む。
アイツぜってー確信犯だ。
今度必ずゴミ片付けさせる!!
眉を寄せ、ぶつぶつ呟いていたところで、屋上のドアが思い切り開けられた。
顔を向ける間もなく後頭部に打撃を受けた。
「…ダッ!!」
「こらぁー!銀二!!あんた毎日毎日弁当忘れるたぁ、いい度胸じゃないの!!」
銀二は後頭部を抑えながら、顔を歪めて振り返った。
腰に手を当てて自分を見下ろすのは、隣に住む一つ上の、
「リンダ、」
「リンダじゃない。凛香様とお呼び」
「……んだよ。凛香、てめー、呼ぶ前に殴るんじゃねーよ!」
「じゃあ、呼んでから殴る」
「そもそも殴るな!」
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