鈴が鳴るとか鳴らないとか

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 その頃の世莉はと言うと、見えないものを見ては怖がって真理から離れることすら出来ない子になっていたという。  尊は見える人ではない。神主というのはそんな力があるからなれるわけでわけではなく、神様に奉仕するのが仕事だ。  けれど彼はそれに理解を示し、彼女にこのお守りを持たせることにした。 『この鈴が世莉を守ってくれるから、肌身離さず持っていなさい』  その鈴を身に着けてから、世莉はみんなが見えないものを見ることは無くなった。というか、この家にはそんなものはいなかったのだ。さらに言えば、真理のそばにいる限り安心だと彼女は子供ながらに思っていた。子供は母親のそばにいるだけで精神の安定が図れるものなのかもしれない。  こんな環境だったせいか、小学生のある日、世莉はすっかり安心して鈴を忘れて学校に行ったことがある。途中で気がついたけど、もう大丈夫だろうと思ってた。尊も『大きくなれば見えなくなる』と世莉に教えていたし、それにお守りなんて気休めだ、くらいに思ってた。
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