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「ごめんなさい。私、あなたは伯母さんに頼まれて、仕方なく私を嫁にもらったんだと思ってたの。だから愛されてるとは思ってなかった」  重ねられた夫の手に、少し力が加わる。 「辛かったのはおまえの方だろう? 俺はずっと後悔していた。おまえが裏切った男に未練を残しているのは知っていたからな。俺はそいつからおまえを奪った事になる。おまえを嫁にもらってからも不安でしょうがなかった。そいつが迎えに来たら、おまえは行ってしまう。それが嫌で、逃げるように引っ越したんだ。俺のわがままに付き合わせてすまなかった」 「謝らないで。あの人とは終わってたの。私はお父さんが好きよ。私の方こそ優しくできなくてごめんなさい」 「お母さんは優しいよ。俺なんかに一生添い遂げてくれた。長い間、ありがとう」  微笑んだ夫の目がゆっくりと閉じられ、握った手からスッと力が抜けた。 「お父さん?」  異変に気付き声をかける。だが返事はない。 「お父さん!」  今度は腕を揺すってみた。夫の反応はない。 「いやよ、お父さん!」  私は狂ったように泣き叫びながら、ナースコールのボタンを何度も押した。  なんて愚かな人生を送ってきたのだろう。私は夫の事も伯母の事も誤解していた。謝りたくても伯母は、もうこの世にはいない。  せめて夫には償わせて欲しい。     
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