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コーチと呼ばれる長距離バスの、ヒースロー空港までのチケットを買うと、出発までの時間をつぶすため、近くのビーチまで出た。
お世辞にも奇麗とは言いがたい海の中で、酔狂な英国人たちがまだ数名泳いでいる。
夏を惜しむにしても、生白い彼らの水着姿はあまりに無粋だった。
薄ら寒い光景から目をそらし、ユキハルは波打ち際を歩いた。その後ろでエミがあッと小さく声をあげ、ユキハルの袖を引いた。
彼女が指す方を見ると、防波堤に寄りかかり、男二人がキスをしていた。二人とも短髪で、浅黒く焼け、同じような骨格を持った堂々たる体躯の男たちだ。
「うそ、マジで? あたし初めて生で見たー」
エミが声をひそめてはしゃぐ。
ユキハルは血が逆流するのを感じた。
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