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 汚くとも、海は穏やかで、その光景は嫌いではなかった。  小型の遊園地が乗った賑やかな桟橋をぼんやりと眺めていると、突然耳元で犬に吠えられた。ビクリとして振り返ると、思いがけず長い黒髪が目の前で踊った。  その髪の主が振り返り、こちらを挑発するような、威嚇するような目で睨みつけ、笑った。  ドクン、と心臓が跳ねる。  グレイとブラウンのオッドアイ――  蒼白い肌が、どこかヴァンパイアを思わせる、若い男だった。 (日本人……?)    いや。生粋ではない……だろう。けれど間違いなく、東洋の血が混じっている。
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