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あの日、自分の体に異変を感じ、自分で検査薬で確かめた。陽性反応は裏切りの結果としか思えず、信じたくなくて、きちんと病院で妊娠の有無を確かめようと思った。
自宅や職場のエリアは排除し、縁のない土地の病院を選んでいったのだが、そこで彼の可愛がっている部下、三崎君の新婚の奥さんに、出くわしてしまった。
「えーっ!妊娠ですかー!おめでとうございます~!」
なぜすぐに否定しなかったのだろう。こんなふうに祝福の言葉を受けることを、かつて何度も夢想したせいだろうか。甘く薫るような言葉を、まるで本物のように一瞬味わってしまった。
それほどあまりにも不意のことだった。結果、夫の耳に入ることになったのだから、ボーッとしているにもほどがある。
それは、一人で決めて、中絶手術をした直後のことだった。
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