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小間使い
ラグラ・スイツは王城で小間使いをしている。
担当は、数ヵ月前に部屋を開けたばかりの彩石(さいしゃく)判定師、ミナ・ハイデルだ。
彩石とは、人がそれぞれに持つ土、風、水、火の4種の異能を助ける石のことだが、ラグラは正直、彩石を何に使うのか、わからない。
いや、明かりや焜炉や保冷庫や洗濯機や乾燥機に使われているのは知っている。
だがそれ以外にどんな用途があるのかと改めて考えても、何も浮かばないのだ。
無意識に首を傾げたとき、思い至った。
そういえば風の者は伝達で使うのだった。
ラグラは風は使えない。
土と火の2種持ちだ。
そう大きな力でもないので、それを活かした職業に就こうとは思わなかった。
ほかの国では知らないが、ここ、アルシュファイド王国では、異能を使用する必要がない。
火は安全なものが行き届いているし、ラグラには土の利用法が判らない。
その状態でこれまで不自由しなかったので、今更利用法を考えようとも思わなかった。
そんなラグラには、彩石判定師が王城に一室を与えられるほど重要視されている理由が判らない。
しかも二間で、併せたその広さはラグラの2階建ての自宅を横に並べた程のものだった。
王都レグノリアに立派な自宅があるとはいえ、隣の四の宮の居室の倍ある。
ちなみに、四の宮の居室は短期滞在用と長期滞在用に分かれていて、廊下を挟んだ向かいに並んでいる長期滞在用の部屋は、それなりに大きなものだ。
だがそれでも、彩石判定師居室ほどではない。
その広さを管理するためもあり、彩石判定師付きの小間使いは2人いる。
もう1人はリュピナ・セリアだが、まだ来る時間ではない。
ラグラは早番で、朝の5時から昼の14時までが勤務時間だ。
リュピナは昼の13時に出勤し、22時に勤務終了となっている。
それ以外の時間とふたりの休日…週末の藁(こう)と円(えん)の日は、その時間帯に王城で働くことになっている小間使いの誰かが対応する。
この日もラグラは、まだ辺りが暗いうちに王城の裏門から、なかに入った。
アルシュファイド王国が安全なことは知っているが、裏門警備の騎士たちを見ると、ほっとする。
挨拶をして、王城の敷地内に入ると、南棟の女性用更衣室の扉を開けてなかに入る。
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