小間使い

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手早く着替えて、同じく南棟にある昇降機へと向かった。 4階まで上がると、控室で時間まで同僚とたわいのないお喋りをして、それから仕事を引き継ぐ。 ラグラの仕事はまず、調理室に行って、2人分の朝食を用意することから始まる。 これは、あらかじめ王城の料理師が、焜炉(こんろ)天火(てんぴ)で火を通すだけのものを作っているので、ラグラはそのようにしたあと、綺麗に盛り付けて出すだけだ。 ミナの朝食は大抵6時半ばなので、ある程度準備をしてから、組み紐を引かれて呼ばれるのを待つ。 その間に、昨日のうちにリュピナが洗って乾かし、きちんと折りたたんでおいた洗濯物を確認してから、そのほかのものを確認する。 まずは寝具。 これはミナが出掛けたら、すぐ取り換える。 それから食事時に汚した場合に備えての机掛け。 そのほか、浴室などで取り換えるもの、補充するものなど、洗濯物と一緒に専用の台車に載せて準備する。 ミナは、あまり手が掛からない。 どういう出自なのか知らないが、おそらく自分と変わらなかったのだろうという印象を持っている。 それがなぜ今の状況になっているのか、ラグラには知ることはできないが、大事なのは自分が相手を満足させられるかどうかだ。 ミナは不都合を口にしないところが難しいが、出来るだけのことは、しているつもりだ。 ただ一点、問題があるとすれば、風の宮公の扱いだ。 毎朝食事を求められるので、用意して持って行くのはいいのだが、ミナへの親密さの求め方が大胆で、こちらが赤面してしまう。 あれを平気な顔で受け流すミナに感心する。 そんなことを考えていると、組み紐が引かれて独特の音が鳴る。 ラグラは急ぎ足で彩石判定師居室に向かうと、扉を叩いた。 するとすぐにミナが顔を出し、朝食の支度を2人分、と注文した。 ラグラは承知して、また急いで調理室へと向かい、最後の仕上げをして、すべて食事用の台車に載せると、再び彩石判定師居室へと向かった。 扉を叩くと今度は(いら)えのみがあり、なかに入ると、どうやら風の宮公もいるようで、あちら側を向いている長椅子から足が見えた。 あの体勢だと、ミナは、また膝枕をしているのだろう。 気にしないようにして、ラグラは食卓を整えてからミナに声を掛け、脇に控えた。
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