10人が本棚に入れています
本棚に追加
手早く着替えて、同じく南棟にある昇降機へと向かった。
4階まで上がると、控室で時間まで同僚とたわいのないお喋りをして、それから仕事を引き継ぐ。
ラグラの仕事はまず、調理室に行って、2人分の朝食を用意することから始まる。
これは、あらかじめ王城の料理師が、焜炉や天火で火を通すだけのものを作っているので、ラグラはそのようにしたあと、綺麗に盛り付けて出すだけだ。
ミナの朝食は大抵6時半ばなので、ある程度準備をしてから、組み紐を引かれて呼ばれるのを待つ。
その間に、昨日のうちにリュピナが洗って乾かし、きちんと折りたたんでおいた洗濯物を確認してから、そのほかのものを確認する。
まずは寝具。
これはミナが出掛けたら、すぐ取り換える。
それから食事時に汚した場合に備えての机掛け。
そのほか、浴室などで取り換えるもの、補充するものなど、洗濯物と一緒に専用の台車に載せて準備する。
ミナは、あまり手が掛からない。
どういう出自なのか知らないが、おそらく自分と変わらなかったのだろうという印象を持っている。
それがなぜ今の状況になっているのか、ラグラには知ることはできないが、大事なのは自分が相手を満足させられるかどうかだ。
ミナは不都合を口にしないところが難しいが、出来るだけのことは、しているつもりだ。
ただ一点、問題があるとすれば、風の宮公の扱いだ。
毎朝食事を求められるので、用意して持って行くのはいいのだが、ミナへの親密さの求め方が大胆で、こちらが赤面してしまう。
あれを平気な顔で受け流すミナに感心する。
そんなことを考えていると、組み紐が引かれて独特の音が鳴る。
ラグラは急ぎ足で彩石判定師居室に向かうと、扉を叩いた。
するとすぐにミナが顔を出し、朝食の支度を2人分、と注文した。
ラグラは承知して、また急いで調理室へと向かい、最後の仕上げをして、すべて食事用の台車に載せると、再び彩石判定師居室へと向かった。
扉を叩くと今度は応えのみがあり、なかに入ると、どうやら風の宮公もいるようで、あちら側を向いている長椅子から足が見えた。
あの体勢だと、ミナは、また膝枕をしているのだろう。
気にしないようにして、ラグラは食卓を整えてからミナに声を掛け、脇に控えた。
最初のコメントを投稿しよう!