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会話の内容は、あまり気にしないようにしているのだが、やはり聞こえてはくるので、今日一日のミナの予定は、王城での作業らしいと知った。
食事が終わると、片付けをして、部屋を辞す。
調理室へ持ち帰った食器を洗うと、綺麗に拭いて、同じ階の調理準備室へと持っていく。
ここから調理室へと入って、食器類を返すのだ。
それが終わると、控室で待機する。
ミナが出掛けるまで、どんな用事を言い付けられるか判らない。
だが今朝も呼ばれることはなく、8時を回ると、最初に準備した台車を押して、彩石判定師居室に入った。
既にミナは出勤しているらしく居ないので、気を使う必要はない。
まずは居間兼食事室を整えて、次は寝室。
浴室なども整えて、よごれ物を持って部屋を出ると、洗濯室へ向かう。
こちらでは寝具などを洗って乾かすが、機械任せなので、その間に休憩を取ったりする。
やがて乾燥の終わった寝具などに、しわを伸ばすための火熨斗を当てて、きれいに仕上げて折りたたむ。
それらを、部屋を整えるための台車に載せて、翌日の準備は完了だ。
それから控室で待機して、12時になると1階の食堂まで昇降機で降りる。
1階の食堂は、騎士以外の、王城で働く者たちの食堂だ。
管理官たちは2階に行くが、それ以外の者たちは大体こちらなので、当然混む。
ラグラは、同僚と配膳台に並んで膳を整えると、なんとか空いている席を見付けて座った。
手早く食べて席を立つと、隣の休憩室へ行って寛ぐ。
話されるのは、専ら週末の楽しみだ。
1時間の休憩が終わると、同僚と別れて控室に戻り、出勤したリュピナと引き継ぎ事項を確認しあう。
それから、彩石判定師居室に2人で行って、掃除をしながら不備がないか確かめる。
それが終わると、終業だ。
昇降機で1階に降り、更衣室へと向かう。
1階の廊下の中央には植え込みがあって、上階を通して明るい光が降り注ぐ。
その緑に目をやりながら歩いていると、ふと注意を引く音がした。
ちょうど、王城の南にある黒檀塔に向かう、連絡橋に続く通路に差し掛かったところで、今の時間、両開きの扉は開いていた。
人の姿はなく、気のせいかとも思ったが、なんとなく足が向いて、連絡橋の方へ向かう。
近付くにつれ、連絡橋の左手側に黒い塊が見え、不審に思って更に近寄ってみると、人が倒れているようだった。
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