第一話

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「…今日が期限なんですけどねぇ…」 書類の束を整理しながら、少しくぐもったような声が藤井女史から漏れた。 「どうかしたんですか?」 その声に呼応して彼女が座る席に近よって来た成嶋に、藤井は書類をチラリと見せた。 「チェックシートですか?」 「そう。まだ提出されてない方が数名…」 眉を眉間に寄せ気味にして微笑むのは、彼女が困っている時の癖である。 「居るよねぇ、そういうの。こっちにもスケジュールがあるんだから、キッチリ守ってもらわないとねぇ。」 「?!」 いきなり背後から飛び込んできた声に、成嶋は驚いて踵を返した。 「!!嘉瀬先生!?」 一緒に振り向いた藤井も不思議そうな顔をしている。 「あら、先生…今日はいらっしゃる日でしたっけ…?」 「別件で用があったもので、そのついでに寄りました。」 軽く微笑んで言葉を返す嘉瀬は、見るといつものラフなスタイルではなくスーツ姿だ。 驚いたまま固まっている成嶋を一瞥して言葉を続ける。 「君が回収に行けばいいんじゃない?」 「はい?!」 「誰が提出してないか、リストアップして頂けますか?」 藤井に向き直り、そう提案する。 「はい…できますが…?」 「それを彼に渡してください。」 「僕ですか?!」 「そ。」 腰に手を置 いて向き直り、 「君の仕事でしょ?」 そう言って小首を傾げて見せた。
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