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「…今日が期限なんですけどねぇ…」
書類の束を整理しながら、少しくぐもったような声が藤井女史から漏れた。
「どうかしたんですか?」
その声に呼応して彼女が座る席に近よって来た成嶋に、藤井は書類をチラリと見せた。
「チェックシートですか?」
「そう。まだ提出されてない方が数名…」
眉を眉間に寄せ気味にして微笑むのは、彼女が困っている時の癖である。
「居るよねぇ、そういうの。こっちにもスケジュールがあるんだから、キッチリ守ってもらわないとねぇ。」
「?!」
いきなり背後から飛び込んできた声に、成嶋は驚いて踵を返した。
「!!嘉瀬先生!?」
一緒に振り向いた藤井も不思議そうな顔をしている。
「あら、先生…今日はいらっしゃる日でしたっけ…?」
「別件で用があったもので、そのついでに寄りました。」
軽く微笑んで言葉を返す嘉瀬は、見るといつものラフなスタイルではなくスーツ姿だ。
驚いたまま固まっている成嶋を一瞥して言葉を続ける。
「君が回収に行けばいいんじゃない?」
「はい?!」
「誰が提出してないか、リストアップして頂けますか?」
藤井に向き直り、そう提案する。
「はい…できますが…?」
「それを彼に渡してください。」
「僕ですか?!」
「そ。」
腰に手を置 いて向き直り、
「君の仕事でしょ?」
そう言って小首を傾げて見せた。
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