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「……いや、今日はやめとこう。大事な話があるんだ」
「大事な話? 実はね、あたしも貴樹君に大事な話があるの」
おーっと、理穂ちゃんが変則気味の攻撃にでた。
「な、何?」
「貴樹君から言ってよ」
「あ、ああ。……俺たち、いつまでもこのままでいいのかなとか思ってさ」
貴樹君、教科書どおりの綺麗なジャブです。
「そうよね」
「そろそろさ、こういう関係終わりにしないか?」
ついに出ました。貴樹君、渾身の右ストレート。打ち終わりは、すぐにガードを固めて涙カウンターの餌食にならないようにしなければいけません。
「……」
出たー! 理穂ちゃんの沈黙攻撃! これは効きそうですね。さらに、瞳がうるうるしてきた! 理穂ちゃんのラッシュに貴樹君耐えられるでしょうか?!
「ありがとう」
「ありがとう?」
理穂ちゃんの口から意外な言葉です。どういうことなんでしょうか。
「お礼言われるようなこと言ったつもりはないんだけど。もう一度言うよ。俺たち、そろそろ……」
おーっと、理穂ちゃんがいきなり抱きついてきた! ホールドです。さらに唇を重ねてきた。これは貴樹君の攻撃を封じようということでしょうか。
「貴樹君が決断してくれるなんて夢みたい! あたしね、ここんとこ無かったのよ。そう、あなたの子よ。どうしようかと思ってたの。でも良かった。貴樹君が決断してくれて。さっそく結婚式の日取り、決めましょ!」
これは強烈なボディブローです。貴樹君ダウン! 見事なKO勝利を納めた理穂ちゃんが貴樹君を介抱しています。
数々の激戦を繰り広げてきた貴樹君も、ついにプレイボーイ引退の日を迎えそうです。ウエディングベルという名のテンカウントと共に。
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