別れ話タイトルマッチ

3/3
前へ
/3ページ
次へ
「……いや、今日はやめとこう。大事な話があるんだ」 「大事な話? 実はね、あたしも貴樹君に大事な話があるの」  おーっと、理穂ちゃんが変則気味の攻撃にでた。 「な、何?」 「貴樹君から言ってよ」 「あ、ああ。……俺たち、いつまでもこのままでいいのかなとか思ってさ」  貴樹君、教科書どおりの綺麗なジャブです。 「そうよね」 「そろそろさ、こういう関係終わりにしないか?」  ついに出ました。貴樹君、渾身の右ストレート。打ち終わりは、すぐにガードを固めて涙カウンターの餌食にならないようにしなければいけません。 「……」  出たー! 理穂ちゃんの沈黙攻撃! これは効きそうですね。さらに、瞳がうるうるしてきた! 理穂ちゃんのラッシュに貴樹君耐えられるでしょうか?! 「ありがとう」 「ありがとう?」  理穂ちゃんの口から意外な言葉です。どういうことなんでしょうか。 「お礼言われるようなこと言ったつもりはないんだけど。もう一度言うよ。俺たち、そろそろ……」  おーっと、理穂ちゃんがいきなり抱きついてきた! ホールドです。さらに唇を重ねてきた。これは貴樹君の攻撃を封じようということでしょうか。 「貴樹君が決断してくれるなんて夢みたい! あたしね、ここんとこ無かったのよ。そう、あなたの子よ。どうしようかと思ってたの。でも良かった。貴樹君が決断してくれて。さっそく結婚式の日取り、決めましょ!」  これは強烈なボディブローです。貴樹君ダウン! 見事なKO勝利を納めた理穂ちゃんが貴樹君を介抱しています。  数々の激戦を繰り広げてきた貴樹君も、ついにプレイボーイ引退の日を迎えそうです。ウエディングベルという名のテンカウントと共に。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加