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「揉み合っているうちに胸に刺さったのかもしれません。それに、一度取り落としたのかも」 「だとしたら、もっと服が乱れてたり、はさみが汚れててもおかしくないと思いますが。……まあ、これ以上はやめておきましょう。これだけの材料じゃ、真相は分かりませんし」  ひらひらと手を振って、店長は刑事の追及をかわす。 「こちらが言いたいのは、彼女を犯人と決めつけるのは早いんじゃないかってことですよ。何しろ、不自然な点が多すぎる」 「それは……しかし」 「首に締められた痕があるのも確かですし、そもそも血の付いた凶器を持ってコンビニに逃げ込むという行動は、あまりに悪手です。殺人を隠そうとするなら、まずどこかにはさみを捨てたり逃げたりするのが普通だ。気が動転していれば、余計に」  とにかく、もっとよく調べていただいた方がいいですよ。  いやにはっきりと言い切る店長に、若い刑事は苦虫を噛み潰したような顔になった。 「……言われなくてもそうします」 「ええ。特に……」  へらりと笑って、店長は最後に付け加えた。 「今回の事件を最初に通報してきた人物、とかね」
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