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どこまでこの人はマイペースなんだ。殺人犯かもしれない人間を前にして、度胸が据わり過ぎている。
店長はそんな俺のことを気にもせず、みかげに話しかけた。
「んで、君は、こんな時間に何してたの? 家出か何か?」
「いや、それ今聞くことですか?!」
「え? だって不思議っしょ。もう日付が変わる時間だよ?」
俺は頭を抱えた。駄目だこの人。
夜回り先生でも気取ってるのか何なのか知らないが、この場で気にするのはそこじゃないだろう。
「そうじゃなくて、他にいっぱい聞くことあるでしょ?! そのはさみのこととか!!」
「せっかちだなあバイト君は。俺は順を追って聞こうとしてんのに」
「そんな悠長なこと言ってる場合ですか!」
間の抜けたやり取りに、みかげが焦れたような声を上げた。
「あの! 私、本当に何も知らないの!」
「知らない?」
「そうよ。さっき、ファミレスから出て歩いてたら、急に誰かに首の横を締められて……意識がなくなって。気づいたら、これを手に持って倒れてたの!」
俺と店長は顔を見合わせた。
首の横を締める、というのはつまり。プロレスでいうところのスリーパーホールドみたいなものだろうか。頸動脈を締めて落とすという。
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