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刑事は巡査部長の関谷と名乗った。
見たところ30代前半くらいの、若い男性だ。目つきが鋭利で神経質そうな顔をしていて、油断なくこちらを伺っているのが分かる。警察というだけで萎縮してしまうのに、こんな男に睨まれたら、言わなくてもいいことまで喋ってしまいそうだった。
もっとも緊張しているのは俺だけで、奥から出てきた店長は呆れるほどいつも通りだった。
「どうも、店長の南条朔真です。お勤めご苦労さんです」
関谷刑事はじろりと店長を見た。
「恐れ入りますが、捜査にご協力お願いいたします」
「ええ、こちらに出来ることなら。何かありました?」
控室にいるみかげのことなどおくびにも出さず、店長はしれっと惚けている。よくやるよ、全く。
ひやひやしながら見ている俺の前で、刑事は説明を始めた。
「実はここから500mほど西の道路で、先ほど男性が血を流して仰向けで倒れているのが見つかりました」
「ほお、殺人事件ですか」
「まだ分かりません。しかし、その線が濃厚ではあります。どうも、鋭利なもので胸を刺されたようでしてね。出血多量で死亡しています」
病院に搬送された時には既に心肺停止していた、と刑事は言う。
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