始まりの物語

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そしてこの問題を解決すべく幾つかの対策が取られたが、そのうちの一つが かつての介護用パワースーツの技術を流用した、パワードスーツの開発だった。 結局人間が生身で対応するのが一番融通が利いて環境にも良いので、 それならその人間を装甲化してしまおう、という考えだ。 そして大型動物に対してある程度のアドバンテージを得る為、 それなりの大きさが求められた結果、全高4~5メートル前後で開発が進み、 これがやがてレイダー(侵略者・略奪者の意)として完成した。 あまり穏やかではない名称だが、 これは人類が他の星を侵略しているという事実を忘れない為、 言わば自戒の意味を含めて命名された。 ただ、当初の「歩兵の装甲化」という名目とは程遠い物になっていて、 全高は予定の倍、8~10メートルにも達していた。 動力となっている専用のリアクターは、少ない燃料で長時間稼動して、 膨大な電力を発生させる事の出来る、いわばクリーンで超小型の 原子力発電所とでも言える物なのだが、そのリアクターの燃料が 稀少な鉱物を使っていて、その為に運用コストも通常重機の比ではなく、 そういう意味では失敗と言えた。 だが、人の姿をしているレイダーは、荒地やジャングル等で 脅威の踏破性を発揮し、水中でも宇宙でも使えた。 手にした棍棒等の原始的かつ安価な武器で危険動物を追い払い、 食料が必要とあらば大型草食動物を狩った。 道具を持たせれば、建設用の各種重機としても活躍した。 巨大な鍬や鍬を使い、広大な土地をあっという間に耕し、 そのリアクターから生まれる膨大な電力はそのまま発電機として使え、 たとえジャングルの真っ只中であっても、文明の利器を使用出来た。 大幅に大型化してしまったがこれらの利点は捨てがたく、 贅沢な装備であるが、何とか採用された。
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