始まりの物語

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「人類は地球の癌細胞という秀逸な例えがあるが、癌細胞はモラルも知恵も無く  ただ宿主を殺すが、我々は違うはずだ!」 「過ちを理解し、対策を立てて実行する知恵と技術がある!」 「この第二移民惑星こそ、現地の自然と我々の文明とが共存出来る、  本当の意味での楽園-ニューエデンとしなければならない!」 「私は諸君達ならそれが出来ると信じている。たが、傲慢になってはならない。  いくら環境に考慮して手を尽くしたとしても」 男はここで少し間を取り、ゆっくりと次の言葉を続けた。 「これから向かう惑星にとって我々は、侵略者以外の何物でもないのだから」 「そう、侵略者だ。フィクションでは完全な悪役だ。 主人公たちがうち滅ぼすべき、憎っくきエイリアンだ」 「かの惑星は、当然我々に対して牙を剥くだろう。  人体が体内に侵入したウイルスを、白血球で攻撃するかの如く」 「だが、それに対して怒りに任せて焦ってはいけない。  彼らが我々を攻撃してくるのは当然なのだから」 「その際には今の私の話を思い出し、よく考えた上で最善手を打ってほしい」 ここで男はまた一呼吸置き、部屋をぐるりと見回した。 「では私の話はこれで終わ りだ。この後すぐ、部署別の詳細ミーティングにかかってくれたまえ。その後この船はワープに入る。そうすれば半日程で目的地だ」     
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