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「あー、良かったなぁ、意外と短い話で」
「そうだな」
部署別ミーティングに向かう人波の中で、二人の男が会話していた。
少し軽そうな金髪の男の話に、堅そうな黒髪の男が相槌を打っている。
「話が短いのはよかったけどよ、なんだあの青臭い話は。
あんな事が本当に出来ると思ってんのかな?」
「そうだな、まぁ無理だろう。所謂建前というやつだ。
言った本人も実現出来るとは思っていまい」
「だよなー」
「お偉いさんはいいよなー、実際に星に降りて前線で働くでもなく、
適当な指示だけして基地と安全が確保されるまで、
軌道上の船でだらだらしてりゃいいんだからよ」
「まぁそう言うな、彼らには彼らの仕事があるし、さっきの偉いさんは
この船に乗って来ているだけまだマシだ」
「でもよー・・・」
「あの、すみません」
金髪の男が反論を口にしようとしたとき、後ろから別の人物が割り込んできて、
黒髪の男の前に立った。
「ん、何でしょうか?」
「見た所、先遣部署・特殊重機3班のダン・イレーブンさんとお見受けしましたが、合ってます?」
立派な口ひげを湛えて、黒縁の眼鏡をかけた学者然とした男が、
そう言って右手を差し出してきた。年齢は40前後といった所か。
「ええ、そうですが・・・貴方は?」
ダンは握手に応じつつ、少し警戒した感じで聞き返した。
「私は調査部署・環境探査班のドグ・マクバインといいます。担当は生物学です」
そういうと柔和な笑顔をしつつ、力強く手を握ってきた。
「はぁ、それでどういったご用件で?」
「実はあなたに折り入って頼みたい事があるのですが、
後でお時間を頂いても宜しいでしょうか?」
「頼み事?」
見知らぬ男に声を掛けられた上にいきなり頼み事とは、
ダンには経験上、詐欺かセールスといったものしか連想出来なかった。
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