始まりの物語

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「いや、お恥ずかしながら極めて個人的な用件でして、ほら、来なさい」 そう言ってドグは体を半分後ろに向けて誰か?に声を掛けていた。 ドグの後ろに隠れていて見えなかったその人物は、おずおずと 姿を現した。少年だった。歳はおそらく6歳前後と思われた。 関係者の家族も当然この船に乗り込んでいるので、 子供の姿は別段珍しくもない。 「紹介します、私の息子のジグ、ジグ・マクバインです。  ほら、挨拶しなさい、特殊重機班の班長、ダンさんだ」 「よ、よろしくです・・ジグです。お父さんの息子やってます」 緊張しているのか、たどたどしく話すジグ少年。 リゲルが後ろで笑いを堪えているのが分かった。 (やめろ、笑うなよ。お前が笑ったら俺も釣られて笑ってしまう。  お父さんの息子やってるって・・・そりゃそうだろうよ) 笑いを堪えながらダンはこの時点で、ドグの頼み事が分かった。 いや、ジグの頼み事と言うべきか? 「実は頼みというのは・・・」 「レイダーですね?」 この瞬間に少年が顔を輝かせたのを、ダンは見逃さなかった。 「え、ええ、ええそうなんです。よく解りましたね?」 「男の子はロボットが大好きですからね。かくいう自分も  このリゲルもそうです。だから今の仕事に就いている」 リゲルがなんだそんな話だったのかと少し残念がっていたが、 当然と言えば当然だ。そうそう面白い話なんて無いものだ。 「実はその、私も興味がありまして・・・正直言うと、  息子をダシにしたと言われれば反論出来ません」 「ははは、いえ、お気になさらず」 「この子がどうしても近くで見たいと言って聞かなくて・・  いや私も見たいのは確かでしたから、どうにも断り切れなくて」 「で、どうでしょうか?何とか近くで見せて貰うことは可能でしょうか?  機密もあるとは思うのですが、そこを何とか」 「うーん・・・そうですね」
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