シトラスの時間

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「見た目の割りに寂れた店だな・・・まあいい」 そういって壁際の席に茶色の封筒をテーブルに投げて 足を組んで座る30代くらいの男。 スーツのジャケットを椅子に掛け鬱陶しそうにネクタイを緩めている。 「おい、この店は客が来たのに冷ひやすら出ないのか!?」 「おっと失礼、ただいまお持ちします」 お前ではないがな。 と思ったら案の定、双子姉妹がいつも通り 水とおしぼりをひょこひょこと運んで来た。 それを視界に入れた店主は席を立ってドリンク作り。厨房にもオーダーしている。 メニューがないこの店、イライラしたスーツのお客には何を提供するつもりやら。 「いらっしゃいませー」 「どうぞー」 「なっ!?子供が働いているのか?他に店員はいないのか?」 どうなっているんだこの店はとお客も困惑。 それはそうか。今までもそうだったしな。 双子もそういったリアクションには慣れたもので 「「ごゆっくりー」」と声を揃えて店の外へ出て行く。 他の客もいないので日課の庭掃除にでも行ったかな。 「こちら当店のサービスでーす。ささ、どぞー」 配膳係の双子が外に出てしまったので珍しく店主が盆を運んでいた。 たまにこういうこともある。 店主的には飲み物作ったら定位置に戻りたいようだがな。 お客もお客で「サービスということは金は取らないんだな」といっているから 「メニューがないだと!?」というクレームも今日はない。 甘く酸っぱい香りと焦げ目がある麦の香りが混ざる小さな籠に入ったそれ。 隙間から見える黄色とオレンジ色はこの間、厨房で仕込んでいたものか。 湯気を踊らせているのは店主チョイスのティーセット。 ハンドルがリング型で外側はロイヤルブルーに金のラインという変わった見た目。 その横にはいつもの角砂糖ではなく小さな瓶に入った緑色が鎮座している。 が、変わった見た目はカップだけだ。その実態は 「ふぅん・・・地味なもんだな・・・」 そう、地味だ。前回の蓬餅同様、「素朴」といえば聞こえがいいが、 今のこのお客の苛立ち具合から見ると、こちらにそんなつもりはなくても 「手抜きじゃないだろうな?」 店主、少し検討はついているが一応確認しておく。今日のメニューは何だ?
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