シトラスの時間

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「本日は自家製マーマレードサンドでござーい!オレンジ、柚子  グレープフルーツの三種類を自家製のパンで挟んでおりまーす!」 果肉の甘さとピールの苦味のバランスをお楽しみ下さーい!と 妙におどけた感じでいった。 ・・・おどけているのはいつもだろうって?その通りなんだが 私のようなぬいぐるみにそこまで求めず、軽く流してくれたまえよ。 「パンもマーマレードも自家製・・・ふむ、一応手は込んでいるようだな」 上から目線の言葉が少し癪だが、店主はニコニコと笑ったまま 「恐れ入ります」と返し「あ、そうそう!」と次の言葉を零す。 「お飲み物は当店特製ブレンドティーです。  サンドが甘いのでそのまま飲むのも良し  隣にありますライムのマーマレードを溶かして飲むも良し  ミルクを入れるも良しご自由にお楽しみ下さいませませ!」 店主の紹介にお客はふぅんと顎に手を当てて思案顔。 何をそんなに考え込んでいるんだと思ったら 腹の底から大きな大きな溜息を吐き出し 「拘りがあるのはわかった。だが、いかんせん華々しさに欠ける・・・  もう少し工夫を凝らしたというか・・・  一目見て、おお!と思う斬新さが欲しいところだ」 といってのける。 パンの焼き具合がどうの、紅茶の香りがこうの マーマレードのとろみがどうたら、食器のセンスがこうたら・・・ 見ただけでよくもまあ指摘出来るものだ。・・・厨房から作った張本人が 不愉快だとばかりにテーブルを睨み付けてるとも知らずに。 店主も「ええ、そうですね」「なるほど」と相槌を打っているが 絶対に適当だ。 それに気を良くしてんだか何なんだかわからないが 「それにこれも・・・」と未だに四の五のいい続けている。 紅茶が冷めるぞ?猫舌か? 「あと一ついえるのは・・・もごぉ!!」 「おお?」 痺れを切らした厨房担当、気づいたらお客の目の前に立ち その偉そうに開いた大口にマーマレードサンドを突っ込んだ。 わざとらしく驚いているが 店主は近づいているのを知っていながら止めなかったな。 「肝心の味は・・・如何なものか?」 ああそうそう、今目の前に立っている厨房担当は実弦じゃないぞ。 アイツは和菓子担当。この店にはもう一人、洋菓子の担当がいるんだ。 こうして表に出ることは稀だがな。
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