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結局俺の話より彼女の独断場で延々と一時間程話を聞かされた。
話し出してすぐにハルさんがお茶を持って戻って来たが話は途切れずだ。
「(ハルさん、彼女の紫苑への溺愛ってハルさん以上ですか?!)」ヒソッ。
「俺の為に生まれていたような女性だろ?」
「はい。そうですね。」
「はい! そこ! 勝手に喋らない! 話をしているのは私よ!」
「はいはい。いっぱい語って喉乾いたでしょ? サクちゃん、ちょっと休憩しよ? はい。お茶とお菓子をどうぞ。」
「『はい。』は一回! んー。でもありがとうハルくん♪喉乾いてたの。」
「それは良かった。はい。隆二くんもどうぞ。」
「僕はね、隆二くんのこと認めてるよ。でもね、一発殴らせて? 理由は言わなくても君自身が分かっているよね。」
「はい。転勤前のことですよね。」
「しーちゃんさぁ、何も話してくれなかったんだ。今まではつまんない話だろうがどんな話でもしてきたのに…。今回は君のこととなると途端に口数減って何も話さない。転勤2ヶ月前まではそんな事なかったんだよ。君の事を話す時なんて乙女全開でさぁ花が咲き誇るっていうの? 可愛いのなんのってなかったんだ。ハニかんだりしてさあ、あぁ隆二くんと付き合っているんだなって。いつ紹介してくれるんだろって楽しみにしてたのに。それが急に週末になったら僕の家で過ごすようになって。君に怒りが湧いたよ。何してんだって。俺が君を認めていたのは紫苑が物凄く幸せそうだったから。君が御曹司だからじゃない。お金で人を心から幸せには出来ないからね。」
「ハルくん…理由語っちゃってるよ?」
「え?そう?(笑)」
「ホントに一発殴っちゃうの? しーちゃんに絶交されちゃうかもよ?」
「それは困るなぁ。」
全然困った風に見えなくて、その優しい笑顔が
ああ、
ただ俺の覚悟を見たかったんだと思った。
紫苑と付き合う前までは好き勝手生きて、来るもの拒まず去る者追わずで取っ替え引っ替え女性にだらしなくしていたのを知っているだけに。
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