1、田中さんの受難

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「田中さん、一番に電話です。」 「はーい、はい、はい。」 田中さんはいつも、返事を三回言う。 僕はそれがとてもイライラする。 きっと僕以外の人間もそう感じていただろうと思う。 「え!?」 突然、田中さんが大きな声を出して席を賑やかにたちあがった。 もちろん、やかましいやつだなって周りも僕も思った。 申し遅れましたが、僕の名は高輪麟太郎(タカナワリンタロウ)僕は田中さんの四期後輩で、同じ部署に属している。 田中さんの顔色はみるみる悪くなっていった。 何故顔色が分かるのかといえば真正面のデスクだから、だ。 「田中さん、今日はランチ飛水屋にしようかって言ってましたけど、メニュー選ばれました?」 「あぁ、はい。いや、今日はいいや。悪いね。」 返事を三回言わなかった。 これは相当調子が悪いようだ。
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