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「いらっしゃいませ。田中様がお昼に来られるなんて珍しいですね。」
「こんにちは。奥の部屋少し借りてもいい?」
「もちろん。」
背は180㎝ほどあるだろうか、整った顔のウェイターが僕らを案内した。
奥の部屋は入り口の部屋とは趣が正反対で和室だった。
「座って。」
まるでこれから説教でも始まってしまうような雰囲気だ。
「はぁ、土岐津となんの話ししてたの?」
「な、なんのって…」
「俺に言えないような内容?」
「ち、ちがいま」
スーと襖が開いて先ほどのウェイターが顔をのぞかせた。
「お取込み中すみません。飲み物は何になさいます?」
「…あぁ、俺はコーヒーで。」
田中さんの声が少し暗い。
「僕も同じで。」
「はい、かしこまりました。」というとスーと襖を閉めた。
「…で、どういう話ししてたの?」
「た、田中さん怒ってるんですか?」
「怒ってないよ。ただ、少し余裕がないだけ。」
そういうと「はぁ」とまた溜め息ついた。
沈黙の時間、僕はどうして田中さんが怒ってるのか全く分からないで俯いていた。
「…なんで泣いたの?」
「泣いてないです」
「だから!今、冗談とかそういうのいいから!真面目に話してよ!」
田中さんが急に大きな声を出した。
いつもおチャラけたりはしても冷静な田中さんが声を荒げる。
トントン
と音がするとまたスーと襖が開いて香ばしいコーヒーの香りと一緒にウェイターが入ってきた。
「コーヒーがはいりましたよ。」
田中さんの前と僕の前にトンと置くとウェイターと僕の目が合った。
柔らかく微笑む。
「まぁまぁ、可愛い子猫さんが怯えきってますよ。田中様の御嫉妬も可愛らしいですが、コーヒーでも飲んで少し落ち着かれたらどうですか?」
しっと…
嫉妬…?
「では、失礼いたしました。ごゆっくり、どうぞ。」
ウェイターはにっこりしながら去っていった。
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