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目の前に置かれたコーヒーを田中さんが一口飲んで深呼吸した。
「ごめん。つい大きい声出した。」
「ぇ…ぁ、僕もふざけてるつもりじゃなかったんですけど、真面目に応えなくてすみません。」
僕も一口コーヒーを飲む。
「美味しい!」
今まで飲んだコーヒーの中でダントツ一番美味しいコーヒーで思わず声に出てしまった。
「ぷっ、」
田中さんが思わず吹き出す。
「す、すみません!信じられないくらい美味しかったから、つい。」
「いや、よかったよ。美味しくて。うん、ふふ」
田中さんが笑ってる。
急に力が抜けた。
「よかった…」
「?」
「田中さんにまで嫌われちゃったのかと思って…。どうしようって思って…、」
「嫌いになるわけないだろ。」
「…でも、僕が言ったのに言ってくれなかったから…」
「なにを?」
「す、すー…なんでもないです…。」
田中さんがふっと鼻で笑った。
「高輪ちゃん、ちょっとこっちおいで。」
「…なんですか?」
「ほら、こっち。」
ポンポンと自分の隣の座布団を叩いた。
僕はなにか期待しつつ渋々田中さんの隣に座った。
田中さんが僕の座った座布団をグッと引いて自分側に引き寄せると僕を後ろ側からギュッと抱きしめた。
「…俺は、高輪ちゃんと土岐津の関係に嫉妬したの。しかも、土岐津のために涙なんて流してるからさぁ。嫉妬の炎メラメラよぉ。」
田中さんが素直に認めた。
だから、僕も素直に事の成り行きを話した。
「…実は、田中さんとのことを土岐津に話すのを少し躊躇ったんです。
本当は、友人だし、話ししたかったけど、そういうの良く思う人ばかりじゃないじゃないですか。だから話さなかったんです。
でも、話をしないことを怒り出して、その後田中さんとだって知ったら、何故だか急に席を立って会社に戻っちゃったんです。…きっと良く思わない方の人間だったんだなって。
…そしたら、二度と今までみたいに話しも出来なくなるんだろうなって思って…勝手に涙が出てきて、勝手に出たんですよ?」
「ふーん、勝手に?」
「そ、そりゃ、一番仲良かったし、話し聞いてくれたり一緒にご飯も食べてたし、、だから、少し、悲しくなって。」
「そっかぁ。土岐津が好きなのな。」
「!、ちがいます!友情です!僕が好きなのは…」
「好きなのは?」
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