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「ちくしょー、じゃあ何だったら勝てるんだよ!?」
終業後、残業終えて同期の土岐津(トキツ)に愚痴りながら焼き鳥を頬張った。
「やめとけって~、お前田中さんには勝てねぇべ。」
「なんでだよ!僕は昨日は勝てたんだよ!田中さんより先にエレベーターに乗れたし!」
「いや、お前がさっさと帰った日部長と取引先と接待行ったから。」
「え!?マジか!?なんだよぉぉ、なんで俺連れてかないんだよぉ、部長も田中さんかよぉ。」
「だから無理だって!あの人うちのエースだぜー?今俺らがバタついたって追い越せねぇって!てかさ、めちゃくちゃ美人の奥さんもいるらしいし勝てっこねーよ!」
仕事できる上に家庭に行けば美人の妻がいるなんて、なんなんだよ。不公平すぎるよ。
「「やってらんねぇよ!!!」」
ん?
ガチャンと派手にグラスを置いた音と自分の声とシンクロした声が遠くの席から聞こえた。
「ぷ、お前どっかのおっさんと声被ってたぞ。」
土岐津爆笑している。
でも、僕は聞いたことのある声に耳を澄ました。
「おいおい、本当にミチルさん出てっちゃったのかよ?」
「本当もくそもねぇよ。会社に電話かけてきてそう言ったんだよ。接待だったんだからどうしようもねぇだろぉ。本当やってらんねーわー!!」
体を傾けて目を凝らして見てみると噂していた田中さんが田中さんの同期の水谷さんと飲んでいた。
「やば、本物いた!田中さんいる」
思わずヒソヒソ声で土岐津に伝える。
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