9.おとなの条件

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「田中さん、昼休み終わっちゃいますよ。」 「…真面目だなぁー、高輪ちゃんは。」 田中さんは僕の頭を撫でながら苦笑いした。 「でも、僕、社会人として、大人として最低だと思うんですけど、このまま…サボりたいです。」 「…ふふ。うん、俺としては最高だよ。」 田中さんが「よっしゃ!」と言って勢いよく起きたと思うとどこかに電話し始めた。 「もしもし、水谷?あのさ、…え?はは!流石。その通りです。そう、二人とも。お願いします。OK 、今度奢るよ。うん、サンキュー。はーい、じゃ。」 水谷さんがなんとかしてくれるようだ。 少しホッとした。 僕は元の席に戻って冷めたコーヒーをのんだ。 「さて、どうしよっか?」 田中さんが微笑んだ。 胸がキューんとする。 「昼、食いっぱぐれたでしょ?なんか食いに行く?」 田中さんが僕を気遣ってくれる。 「?、どうしちゃったのボーッとしちゃって。」 「あ、いや、なんか嬉しくて。」 「ふふ、変なの。」 田中さんもコーヒーを飲んだ。 「いや、あの、本当のこと言っていいですか?」 「え?何?なんか怖いな。」 「…僕、したいです。」 「…え」 「え、エッチ… ああ!!!変態みたいですよね!!??ごめんなさい!!!忘れてください!!!」 田中さんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてフリーズした。 が、 すぐに再起動した。 「ヨウちゃん!!!!」 「はいはい?」 「!?」 田中さんが叫ぶと間髪入れずに襖がスーと開いてウェイターが顔を覗かした。 「ヨウちゃん、今日は二階予約あるの?」 「ないですよー。ふふふ、ご自由にお使いください。お代は後で請求します。ふふふ。」 まるで全て聞いていたかのようにウェイターと田中さんとの間で何か話がついていく。 すると田中さんは立ち上がり、僕をいきなりガバッと抱き上げた。 あまりに勢いよくてコーヒーをこぼしそうになった。 「ちょ!ぇえ!?」 僕は何が起こってるのか脳が処理に追いつかずされるがままになっていた。
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