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「やっぱり僕、土岐津ときちんと話ししてきますね。」
昼休憩を初めて高輪麟太郎と過ごした。
昼飯を食べ終えてコーヒーで一服してこれからゆっくりいろんな話をしていこうと思っていたのに。
彼は恋人じゃなく友人をとった。
こんなに心狭くてはいけない!と昨日誓ったばかりなのに、いきなり少しムッとしてしまう。
「そんな顔しないでください。大丈夫です。」
土岐津は多分高輪のことが好きなんだと思う。
しかも、俺より高輪とずっと友人している分知っていることも多いと思う。
見たことのある表情も俺よりきっとたくさんある。
それが悔しいし、なにより土岐津に持っていかれそうで怖い。
たまに、高輪はただ空気に流されているだけなんじゃないだろうかと思う。
本当は女性を抱きたいんじゃないだろうか、とか。
「今日…メガネ作ってくるって言ってたじゃん。なんでコンタクトにしたの?」
「あぁ、やっぱり聞いてくると思いました。」
昨晩、イチャイチャしてる間にメガネを踏み潰して壊してしまい、高輪は朝一番メガネ屋に行ったのだった。
「メガネ作るのに一時間くらいかかるって言われて、コンタクトレンズなら同じ度数直ぐに在庫があるから出せるって言われたんです。
会社、遅刻したくなかったからそれでもいいやって思って…でも結局ちょっと遅刻しちゃいましたけど…。メガネとっちゃダメって言ってたのに約束やぶってごめんなさい。」
「本当だよ。みんなして高輪ちゃんがかっこいいことにきづいちゃって、妬ける妬ける!!」
「ぅう、自分としてはかっこいいと思われたら嬉しいけど、ごめんなさい…」
「…ふふ、嘘だよ。冗談。妬けたのは本当だけどね。」
そう言って高輪の頭を撫でると、喉を鳴らしている猫みたいに嬉しそうに肩をすくめた。
「土岐津のとこ、いってらっしゃい。」
俺が高輪を笑顔で見送ったのはほんの数分前だった。
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