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 どうしてこんなところに月子のUSBメモリーがあるのだろう、USBメモリーは用事を済ませた後に月子に返したはずなのに……。  彩花は何か身震いするものを感じた。  彩花は倉庫のすみに放置されている古いパソコンの電源を入れて、月子のUSBメモリーを差し込んだ。  そして、パスワードである森川の誕生日『0129』を入力した。  USBメモリーの中には「連絡事項」という名前のフォルダが一つだけ入っている。  彩花は胸をドキドキさせながら、その「連絡事項」という名前のフォルダをクリックした。  フォルダの中には写真が何枚か入っていた。  忘れもしない、あの「連絡事項」という件名で送られてきたメールに添付されていた、月子と森川の密会写真だった。  でも、あのメールに添付されていた写真は3枚だけだったのに、このフォルダの中には同じような写真が何枚も入っている。  まるで、何枚もある写真の中から、あの3枚だけ選んでメールに添付したかのようだ。 (――そうだったんだ)  彩花はわかった。  あの月子と森川の密会写真を送った「誰か」の正体は月子だったのだ。  写真は多分、興信所かどこかに撮らせたものだろう。  もちろん「旦那も仕事も何もかも捨ててもいいから」森川と一緒になりたいという願いを叶えるために、月子が撮らせたのだ。  でも、一つだけ、わからないことがある。  月子はどうして彩花にバレるとわかっていながら、写真の入ったUSBメモリーを倉庫に残していったのだろうか。  彩花は考えながら、USBメモリーの中に入っている月子と森川の密会写真を眺めた。  写真は同じように見えて、一枚一枚表情やアングルの位置が微妙に違っている。  彩花はふと一枚の写真に目を止めた。  その写真の中の月子は、まるでカメラの方を見て微笑んでいるかのようにも見える。  彩花には写真の中の月子が、勝ち誇って微笑んでいるかのように見えた。  そう、彩花に対する優しささえも、自分が勝つためや森川を手に入れるための手段だったんだと言いながら微笑んでいるかのように……。 【完】
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