150人が本棚に入れています
本棚に追加
彩花は何とか倉庫整理を終わらせると、自分の部署に戻った。
早速、自分のパソコンにUSBメモリーをさして、月子から言われた『0129』のパスワードを入力する。
入力しながら彩花は「そろそろ別の人を探した方が良いわね」という月子の言葉を思い出した。
自分でも別の人を探した方が良いとわかっている。そうは言っても彩花はやっぱり森川のことが好きだった。
彩花は少し離れた席にいる森川を見た。
(――やっぱり、あなたが好き)
心の中で呟きながら森川を見つめていると、彩花は突然背中を強く押された。
振り返ると、ちょうど美咲が後ろを通り過ぎようとしているところだった。
「ごめんなさい」
美咲は彩花を見下ろしながら言うと、何もなかったように通り過ぎて行った。
たまたまぶつかっただけにしては強い力だったな、と彩花は思った。そして、あの美咲の表情。自分を見下ろした時に睨まれたような気がしたけど……。
彩花はさっき、月子が「森川君のこと、好きなんでしょ?」と言っていたことを思い出した。
(もしかして、美咲は私が森川課長のことを好きだと気付いているの?)
美咲だって森川のことが好きなんだ、月子とはまた別の意味で森川のことを見ているに違いない。
そうなると、森川に熱い視線を送る彩花の存在に気付いてもおかしくない。
(だから、美咲は私にだけ冷たいんだ)
最初のコメントを投稿しよう!