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2.
彩花はその日一日、倉庫整理による疲れと美咲がどうして自分にだけ冷たいのかを悟ったことによる気疲れで、仕事に身が入らなかった。
幸い、特に急な仕事もなかったので、定時で早々に部署のある部屋を後にした。
彩花の足は真っすぐ、昼間に整理をした倉庫へと向かった。
彩花は月子から倉庫のスペアキーの場所を教えてもらっていて、自由に使えるようになっている。
彩花は倉庫に入って、倉庫の中にあるロッカーを開けた。
ロッカーを開けると名札キーホルダーに「屋上(スペア)」と書かれたカギが入っている。彩花はその「屋上(スペア)」と書かれたカギを手に取ると、倉庫を出た。
彩花の持っている倉庫のカギにも「倉庫(スペア)」と書いてあるので、この屋上のカギもスペアキーらしい。
前に誰かが屋上のスペアキーがなくなったと言っていたが、何故か倉庫にあったのだ。
彩花は時々、仕事やプライベートでイヤなことがあるとこのスペアキーで屋上へ行き、空を見上げたり周りの景色を見たりして気を晴らしていた。
屋上への出入りは基本禁止だったから、もちろん誰にも内緒だった。
最近は屋上の風景をスマホのカメラで撮ることもある。屋上からの眺めはなかなか良いものだ。でも、立ち入り禁止の場所だから、誰かに見せることもなく完全な自己満足だった。
彩花は写真を撮るのが好きで、外出先などでもよく写真を撮るが、撮ったからと言ってSNSにアップしたり人に見せたりなどはあまりしない。
目立ちたくない性格からか写真を撮っていることを人に悟られるのもイヤなので、撮影する時にシャッター音のしないアプリをインストールして使用している程だった。
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