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それは、赤い宝石のついたシンプルなネックレスだった。紅泉の瞳と同じ、深い赤い石に金色が混じっている。とても綺麗で、惹きつけられるようなものだった。
「これは、紅玉という。私の力を集めて、結晶にしたものだ」
「紅泉の力?」
石と紐のシンプルなそれを、紅泉は私の首に下げる。鎖骨の辺りで揺れる赤い石は、なんだかとても温かかった。
「これをつけていれば、私はどこにいてもお前を知る事ができる。お前を、見つける事ができる」
石を手に取り、満足そうな顔をした紅泉はやんわりと笑った。
「お前は目を離すとろくなことがないからな。居場所だけでも掴んでおかなければ安心できない」
「監視?」
「そこまでではないがな。まぁ、お守りのようなものだと思え。これは周囲への威嚇だ。私のものに手を出すなと、牽制する意味もある」
「それって、どういう意味?」
首を傾げて問いかける。すると、紅泉はニッと鋭い笑みを浮かべた。
「これは、婚約の証として贈る事が多い。私の力で作った物だ、私の気配が常にお前からする。それを分かっていて手を出そうというなら、私への挑戦だからな」
いい笑顔で言うことじゃない…。
「紅泉、あの…」
「お前の気持ちは分かっている。急いで答えを出さなくていい。これをお前に贈るのは、私が安心したいからだ。それとも、嫌か?」
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