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「お前の事だ、関係ないわけがないだろ?」
その言葉の重みは、意外とずっしりきた。
紅泉は私の事を大事に思ってくれている。その私が軽率な事をすれば、それは全部紅泉にも返ってきてしまう。公に関係を明かしたのなら、余計にそうだ。私の行動一つ、言動一つが紅泉にも大きく関わってしまう。
私は拳を握って、思いを飲みこんだ。私の事に紅泉を巻き込みたくない。
けれどもう、私個人の我儘では済まされない事だってある。
「…桜嘉ちゃんの件は、少し周りの人に任せる」
「春華?」
「私が勝手をしたら、皆に迷惑がかかる。紅泉に、一番迷惑かけちゃう。それは、私が許せないから」
拳を握って唇を噛む。悔しくてたまらない。足掻きたいのに身動きが取れない。
握った拳が、紅泉の手に包まれる。見ると、申し訳なさそうにしている紅泉がいる。
「何かしら、働きかけてみる。白縁も手を貸すと言っていたのだろ?」
「うん」
「それなら少し、見ていてくれ」
背中を軽く叩かれる。そのまま立ち上がって歩いて行く紅泉の背中を見ながら、私はこの決断が正しいのか未だ分からないままだった。
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