水底に沈む

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「一時間くらいだと思います」 「…姿をくらませただけならいいが。李燕!」 「はい」 「藍善に使いを出して、都の外にそれらしい娘が向かわなかったか聞いてくれ。都を出るなら関所を通らねばならない」 「分かりました」 「俺はとりあえず聞き込んでくる」  バタバタと人が動く。紅泉もどこかへ行こうとしている。私は紅泉の袖を掴んだ。 「私も行く!」 「お前はここに…」 「お願い、行かせて! 絶対に、紅泉の傍を離れないから!」  紅泉は迷っているみたいだ。けれど私もこれは引けない。ここで動かないなんて事、とてもできる気がしなかった。 「どれだけ探すか分からないんだぞ。この都がどれ程広いか…。あてもないのにお前を連れ回す事などできない」 「ならば、あたりをつけて探せばよいのですよ」  戸口で緊張したような声がして、私も紅泉も振り向いた。  珍しく緊張した表情の紫廉がそこにいて、ゆっくりと近づいてくる。そして艶瓢ちゃんが持っていた手紙を手に取った。 「思念を追ってみます。ただ、追い詰められて書いたものは感情の念が強すぎて、明確な意志が読み取りずらい。どこまであてになるか分かりませんが、いいですか?」 「構わない。それでも十分に、探す手掛かりになる」     
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