水底に沈む

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 離宮を出て真っ先に紅泉が向かったのは、都を流れる川沿いの道だった。  時刻は既に夜になっていて、川は界を隔てる底なしの淵のように見えた。 「紅泉、どうしてここに来たの?」  少し早い速度で歩く紅泉は川に視線を向けながらどんどん進んでいく。私は必然的に小走り状態になっていた。 「生きているなら、白縁か藍善、もしくは玉蘭達の方に引っかかるだろう。だが、最悪の事を考えていた場合は、ここが一番危険だ」 「え?」  「最悪の事」というフレーズに、私の心臓はドキッと音を立てる。嫌な予感がしてしまう。それを振り払うように走る速度を上げた。 「どういう事?」 「紫廉の話しでは、自刃するほどの覚悟はない。だが、金も人脈も持たない娘が薬を手に入れられるとも思えない。ならば簡単なのが、入水だ」  ゾクッと、背筋を冷たいものが流れ落ちる。私は真剣に川に目を向けた。土手に彼女がいないか、必死で探しだしたのだ。 「紅龍にとって、入水は高確率で死ねるからな。飛び込む覚悟さえあれば、だれでもできる」 「そんな事…」 「おそらくあの娘は、泳げないのだろう」     
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