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怖かったけれど、私がこれまで勉強してきた事はなんだ。初歩を思い出せ。パニクってる暇なんてない!
「紅泉、体を温められる物持ってきて! 後、誰かに頼んで黒耀連れてきて!」
顔を横に向けて口の中に指を突っ込み、中の水を出してから、私はすぐに心臓マッサージを開始した。すぐにでも呼吸が戻ればいい。できるだけ早く!
願うようにそうしていると、コポッという少しくぐもった音がして、横に向けていた口から水が吐きだされるのが分かった。それを急いで指でかきだして口元に耳を持っていくと、ほんの僅かでも「ヒュッ」という息の通る音がした。
着ていた上着を彼女に掛けると、紅泉が毛布を数枚差し出してくれる。近くの民家から借りたのだそうだ。それで桜嘉ちゃんを包んでいるとようやく、バタバタと黒耀が近づいてきた。
「春華ちゃん! 紅泉!」
「黒耀こっち!」
土手を急いで降りてきたその背後から、艶瓢ちゃん達と氏絢さん、そして李燕までがついてきていた。
「川に飛び込んで、今蘇生してたの。微かだけど、自発呼吸できてる。でも、まだ意識が戻らない」
「分かった、後は僕が引き継ぐから」
黒耀は易々と桜嘉ちゃんを抱え上げる。その後を、李燕が追っていった。
「龍姫様、この度はなんてお礼を言っていいか…」
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