繰り返す悲劇

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 紅泉の瞳が加虐の色に染まり、陣が赤い粉を巻き上げる。その場所から出られない様子の紅凱は、大いに焦って何かを言おうとした。だがそれよりも前に、地から吹き上げる様な炎の柱が立ち上った。 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!」 「!」  恨みのある人だ。私はこの人に絶望を突きつけられた。一度は殺そうとした。  けれど断末魔の悲鳴を耳にすると体が委縮して、震えてくる。  暗闇に立つ赤い火柱を見つめたまま動けない私は、フッと触れていた格子がなくなって前につんのめった。 「おわぁ!」  たたらを踏んだ私を助けてくれた腕に、私は見上げる。真剣な表情の紅泉が、私を見下ろしていた。 「大丈夫か?」 「うん。でも、どうして…」 「術者が死ねば大抵の術は消える。だが、油断はできない。早くここから…」  言いかけたその時、突き上げる様な強い衝撃が一つあって、突如屋根を支える柱や梁が爆発した。私達の頭上からも、いくつもの木や瓦が落ちてくる。  目を見開いたまま動けない私を、温かいものが覆いかぶさるように抱きとめてくれる。  次には激しい音と土埃とに覆われて世界は真っ暗な中へ。  私もその衝撃に負けて倒れ込み、動けないまましばらく気を失ってしまったのだった。
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